2012年10月10日水曜日

沢内村フィールドワークで増田進先生のお話を聞きました!

増田先生を囲んで
 8月18日(土)から19日(日)に埼玉民医連で「沢内村フィールドワーク(FW)」を取り組みました。
 (8月の話題で恐縮ですが、ぜひ沢内村について知ってほしいのでご紹介します。

 沢内村は、「いのちの山河~日本の青空Ⅱ」(2009年公開)の舞台となった岩手県の村です。2005年に湯田町と合併して「西和賀町」となっています。
 フィールドワーク(FW)の趣旨は、かつては無医村で医療環境の乏しかった村が日本で初の乳幼児死亡率「ゼロ」を達成し、高齢者・乳幼児の医療費無料化を実現するに至った生命行政と保健活動について学ぶことでした。豪雪・貧困・多病」という大きな問題を抱えていた山間の小さな村で、医療と行政が一体となり住民たちを守るために模索を続けた村の取り組みを通し、地域医療とは何かを考えました。
 「沢内村FW」は2010年8月にも行ってたいへん好評だった企画で、今回は「民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」が8月16日から18日に岩手県花巻温泉で行われたので、埼玉民医連の奨学生交流合宿も兼ねて企画されました。
 奨学生6人を含む医学生10人と職員4人で旧沢内村を訪れました。

深沢晟雄資料館

 8/18(土)  深沢晟雄(まさお)資料館見学
        夕食交流会
        星空観察

8/19(日)  講演と懇談
         講師 増田進医師(元沢内病院長)
        郷土料理の昼食

 
 初日は、沢内病院の隣にある深沢晟雄資料館に寄りました。
 沢内村の村長だった深沢晟雄(1905~1965)がどのようにして村の行政を改革し医療環境を改善していったのかについて、映像や展示資料、資料館の方のお話を通して学ぶことができました。お話を聴いている中で特に印象に残ったのは、住民たちの命や健康を守るために奔走した深沢村長の情熱や意志が住民に根付き、現在も受け継がれているということでした。
 夜には沢内村出身で盛岡医療生協の副理事長である遠藤寿美子さんも交えた夕食交流会がありました。遠藤さんは、TPP問題などを紹介しながら、住民が政治に参加する際に自分たちで積極的に考え、対話によって民意を形成してゆくというプロセスが大切だとおっしゃっていました。このような姿勢は自分たちの世代も学ぶべきところが多いのではないかと感じました。

お話する増田先生




2日目は今回のフィールドワークのメインでもある増田進医師による講演と懇談がありました。
増田先生は、深沢村長の時代に東北大学から外科医として沢内村に派遣され、その後約40年間にわたって村の医療に携わっていました。先生は沢内村に残ることを決心してから、村に本当に必要な医療とは何かということを村の人々と共に考え、住民のニーズに合わせた医療を提供してこられました。

増田先生の講演を聞いたY大学1年生Kくんの感想を紹介します。
「患者を減らすことが理想」という増田先生の考えは医師という職業上矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、これは患者の健康を優先するという患者本位の医療観がその根底にあってこそのものだと思いました。また先生や沢内村の取り組みを学んで感じたのは、何か理想的で画一的な医療のモデルが存在して、それを当てはめれば良い医療ができるわけではないということでした。やはり各地域の事情にあわせ、それを支える住民を巻き込むような形であるべき医療を模索していくことが重要だということがわかりました。
  今回のフィールドワークでは、医学生同士の交流や沢内村の医療を学ぶことができ、地域医療に対する関心が増したという点でもとても貴重な体験ができたと思います。もちろん沢内の豊かな自然や美味しい郷土料理も忘れられません。」
    
◇◇◇

 埼玉民医連では、「沢内村FW」のような学習企画を毎年行っています。特に、埼玉県内の医療や福祉・介護の問題、地域の実態を知る取り組みを重視して企画する予定です。12月には「第19回奨学生交流集会」で、歯学生・薬学生・看護学生・リハビリ学生と交流する企画も行います。
 興味ある医学生のみなさん、ぜひご参加ください。
 
 最後に、沢内村について知ることができる文献や映画を紹介します。 
日野秀逸著「沢内・生命行政に学ぶ」 2010年 日本生協連医療部会)
太田祖電・増田進・田中トシ・上坪陽共著「沢内村奮戦記~住民の生命を守る村」
1983年 あけび書房)
及川和男著「村長ありき~沢内村 深沢晟雄の生涯」(2008年 れんが書房新社)
映画「いのちの山河~日本の青空Ⅱ~」
2009年 大澤豊監督/宮負秀夫脚本/小室皓充制作・企画)
(担当 K・K)